福岡男児殺害事件　父の思い


2008年9月18日、福岡市内の公園で男児が殺害された事件に関して、父親への取材記事が出ています。
「妻追い込んだ　私も加害者だ」　福岡小１殺害、父語る (asahi.com)

父親のやりきれない思いも伝わってくる記事です。
それはともかくとして、家族の歴史についても情報量の多い記事なので、時系列を再度まとめてみます。

　　　　　　　福岡市内の小、中、高校を卒業*
H12年　　　　結婚**し、夫の両親と同居*
H14年頃　　　長男誕生**
H16年頃　　　体が弱く、実家に帰る*　？
不明　　　　　夫と別居**　？
H18年　　　　線維筋痛症の診断を受ける**
H18～19年頃　長男が大学病院で発達障害の診断を受ける。**
H19年夏　　　長男について適正就学指導を受け、特別支援学級に決定*
　　　　　　　容疑者の家族は今春まで、実家で暮らしていた。*
　　　　　　　夏から夫も容疑者の実家に**。
H20年2月　　長男の特別支援学級入学のため、現在のマンションに転居*　夫と長男と三人暮らし*
H20年4月　　長男、小学校入学
H20年春　　　休職*
H20年夏頃　　仕事を辞める*
　　　　　　　容疑者が自殺企図*
H20年8月　　長男の学童保育利用が急減*
H20年2学期　学童保育をやめた*
H20年9月18日　事件当日
　　　　　　　　事件後、福岡市内の実家に身を寄せていた*

*当ブログ過去記事　福岡男児殺害事件　時系列の整理
**「妻追い込んだ　私も加害者だ」　福岡小１殺害、父語る (asahi.com)

今年２月、弘輝君を特別支援学級がある同市西区の小学校に通わせるため、３人は近くに転居した。だが、薫容疑者は８月ごろから体調がさらに悪化。育児の負担も重なり、自殺を図った。夫は「死んだら弘輝も悲しむ」とさとし、入院させる話を進めた。
（「妻追い込んだ　私も加害者だ」　福岡小１殺害、父語る asahi.comより）

やはりポイントはここであると思います。小学校への就学の時期を実家からの援助が受けにくい状況で過ごさざるを得なかったことは、果たして容疑者の病状にどのような影響を与えたのでしょうか。また8月というのは小学校は夏休みに入っており、障害を持つ子どもの親への負担が、増加しやすい時期でもあります。

入院が検討されていた、とのことですが、これがどのような目的での入院であったのかということも知りたいところです。線維筋痛症の治療を目的とした整形外科などへの入院が検討されていたのか、自殺企図に対する精神科での治療が予定されていたのか、どちらの可能性もありそうです。家族と医療機関がどの時点で容疑者の精神疾患の存在を疑ったのか、あるいは最後まで疑うことはなかったのか、それによってこのケースから浮かび上がってくる再発防止への教訓が少し変わってくるようにも思います。

厚生労働省で線維筋痛症の研究班長を務める聖マリアンナ医大（川崎市）の西岡久寿樹・難病治療研究センター長によると、同症は「原因不明で全身が痛くなる病気」。患者は国内に２００万人と推計される。「医師や周囲から十分に症状を理解してもらえず、うつ状態になる人は多い。ただ、薬の副作用を含め、異常行動は考えられない」と話す。
（「妻追い込んだ　私も加害者だ」　福岡小１殺害、父語る asahi.comより）

短いコメントなので、必ずしもコメンテーターの意図が十分に反映されていないのかもしれませんが、このケースに関して「医師や周囲から十分に症状を理解してもらえず、うつ状態になる人は多い。」とだけでまとめてしまうのは難しいように思います。線維筋痛症の疾患概念自体、ざっと資料を見てもピンとこないところはあるのですが、仮に線維筋痛症を疾患概念として認めたとしても、高率にうつ状態を呈すること、精神科、心療内科での治療が必要となるケースも少なくないとされていることはよく知られています。それが「周囲から症状が十分理解してもらえないから」という理由だけで説明できるのかどうか疑問に思います。また線維筋痛症診断の際に、うつ病（+疼痛性障害）の除外が必須ではないらしいというのもよくわからない所です。

また「薬の副作用を含め、異常行動は考えられない」とあるのも、線維筋通症の治療に抗うつ薬やステロイドが使用されることを考えると、ちょっと専門医のコメントとしてはいかがなものかと思ってしまいます。この事例の治療経過をご覧になって、そうした薬剤が処方されていないことを知った上でコメントされている可能性もありますが、もし抗うつ薬の投与がなされていないとすると、それも何だかなあ…。

線維筋痛症参考リンク
線維筋痛症 Fibromyalgia 脊椎関節炎 SeroNegative SpondyloArthropathy （篠ノ井総合病院）
線維筋痛症友の会
心療整形外科 より
　線維筋痛症、うつ状態に伴う筋痛症」お好みの方を
「抗うつ薬が効果があったのだからうつ状態に伴う筋痛症といってもいいでしょう。また線維筋痛症の診断基準からは線維筋痛症といってもいいと思います。どちらでもお好みの病名を使ったいいですよ。」

線維筋痛症 - Wikipedia
リウマチ医と線維筋痛症 （ホツマツタヱ）

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Posted: 日 - 10月 19, 2008 at 07:16 午後       |

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