自閉症社員自殺訴訟　控訴審は和解へ

2005年3月、知的障害を伴う自閉症の男性が自殺したのは会社の配慮不足が原因であるとして、遺族が勤務先であった「ヤマトロジスティクス」に損害賠償を求めていた訴訟で、会社側が500万円の見舞金を支払うことなどを条件に、東京高裁で和解が成立しました。
障害者の自殺で遺族と会社が和解　ヤマト運輸関連会社 (47NEWS)
自閉症社員自殺で和解　会社慰謝料、従業員教育も　東京高裁 (東京新聞)

この裁判では一審では原告側敗訴、その後の控訴審では判決を見直す方向で審理がなされていたようです。

原告側代理人によると、請求を棄却した昨年９月の一審東京地裁判決について、高裁が見直す方向で審理を進め、和解を打診していたという。
（障害者の自殺で遺族と会社が和解　ヤマト運輸関連会社 47NEWSより）

一審に関しては当ブログの過去記事をご参照ください。
自閉症社員自殺訴訟　東京地裁は遺族の請求を棄却 (2008.10.23)
自閉症社員自殺訴訟　ヤマトロジスティクスが和解の意向を示す (2006.9.25)
自閉症男性自殺　遺族がヤマトロジスティクスを提訴 (2006.8.6)

会社側は一審から和解の可能性を探っていたようですが、ようやく和解にたどり着けたのですね。

和解条項には、ヤマトロジスティクス側が慰謝料五百万円を支払うことに加え、障害に関する社員教育を実施することや、障害の程度に応じた職場環境づくりに取り組むことが盛り込まれた。
（自閉症社員自殺で和解　会社慰謝料、従業員教育も　東京高裁東京新聞より）

この部分はこの和解内容の素晴らしいところですね。ヤマト運輸の関連会社の中に従来から障害者の雇用に関して、先進的に取り組んでいる企業があります。
株式会社福祉ベンチャーパートナーズ (2005.7.1)
こうした経験が生かされるとよいですね。

一点、どうしても気にかかるところが。

一審判決によると、男性は０２年に入社。時給減額や勤務時間の変更があった後、０５年３月に埼玉県内の自宅で自殺した。会社側は自閉症と告げられていなかった。
（障害者の自殺で遺族と会社が和解　ヤマト運輸関連会社 47NEWSより）

当初から不思議に思ってはいたのですが、やはり会社側は障害について、きちんと知らされていなかったようです。それが自殺の原因だと短絡することはできないようには思いますが、やはり情報が不足する中で最適の対応を求めることは難しいようにも感じます。（この企業に限ってということでもなく）会社に告知しにくい状況というのもあったのかもしれませんが、そうした背景から変えていくような働きかけが必要なのでしょう。そうした意味で、ヤマトロジスティックスの今後の取り組みが期待されるところです。

関連過去記事
自閉症社員自殺訴訟　控訴審は和解へ (2009.9.4)
自閉症社員自殺訴訟　東京地裁は遺族の請求を棄却 (2008.10.23)
自閉症社員自殺訴訟　ヤマトロジスティクスが和解の意向を示す (2006.9.25)
自閉症男性自殺　遺族がヤマトロジスティクスを提訴 (2006.8.6)
株式会社福祉ベンチャーパートナーズ (2005.7.1)

Posted: 金 - 9月 4, 2009 at 11:21 午後 |