Book Review 『この星のぬくもり』


高機能自閉症者である森口奈緒美 氏の自伝『変光星―自閉の少女に見えていた世界 』を元にした漫画『この星のぬくもり』が復刊されました。

『変光星』も『この星のぬくもり』もいったん絶版となった後の復刊です。『この星のぬくもり』は復刊ドットコム による復刊なのですね。

『変光星』は日本人の自閉症者本人による手記の草分けです。僕にはとても読みにくい本なのですが、その読みにくさも含めて、自閉症者の考え方に触れることのできる貴重な本だと思います。海外のものはどうしても翻訳によって「読みやすく」なってしまうので、違和感が残ることがありますが、その点『変光星―自閉の少女に見えていた世界 』とその続編の『平行線―ある自閉症者の青年期の回想 』は貴重な存在です。

さて『この星のぬくもり』ですが、前半は高機能自閉症の入門漫画として、後半は高機能の子どもたちが遭遇しがちないじめなどの問題に関する啓発の漫画として、よい出来だと思います。同種の漫画がほとんどないだけに、復刊はありがたいですね。
ただやはり『変光星』と比べると、強烈な緊迫感というか、圧倒的にリアルな感じは少し薄れてしまっている感じはあります。やはり分量に限りのある漫画化の宿命なのでしょうか。あるいは漫画化というある種の翻訳を経てしまっているためかもしれません。とはいえ原作の味わいは残されているので、文章よりは漫画になじんでいる方にはやはりこちらがお勧めです。興味を持たれたらぜひ原作も読んでみてください。


Posted: 火 - 8月 10, 2004 at 11:14 午後       |

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