自閉症の原因、３割が誤解


2005年4月1日、日本自閉症協会 は、自閉症の原因を「脳機能の発達障害」と正しく理解している人は３分の２程度であるとする、一般人を対象に実施したアンケート結果を公表しました(Livedoor News )。
(via ちりんのblog )
このタイミングで結果が公表されたということは、発達障害者支援法施行記念アンケートなのでしょうか。
むしろ７割の人が正しく理解しているのか…という驚きを感じたのですが…。

追記 (2005.5.13)
日本自閉症協会 のサイトに、この調査の報告が掲載されています(自閉症者に対する意識調査 )。

アンケートは昨年１０−１１月、協会の関係者を通じて配布、１４５０人から回答を得た。身近に自閉症者や児童がいる人は２９％だった。
日本自閉症協会がこのようなアンケート調査をおこなった動機は、よくわかるような気はするのですが。
しかしそもそもこのようなデザインで行われたアンケートの結果を、「一般人」を対象にしたものであると解釈するのは無理があります。「協会の関係者を通じて配布」では強いバイアスがかかってしまいます。自閉症はかなり有病率の高い障害なので「身近に自閉症者や児童がいる人は２９％」という数字は自然なものにも思われますが、一般の人は自閉症児者を身近でみていても、案外そうだと気づいていないような気がします。
自閉症の原因を「脳機能の発達障害」と答えた人は６８％。「心の病」という誤った回答が２３％に上り、特に若者に多かった。少数だが「遺伝性」「親の育て方」もあり、誤解している回答は合わせて３０％を超えた。

ここにも同じバイアスの存在を感じます。これまでに診てきた自閉症の患者の家族や関係者が、これほど高い割合で正しい知識を持っていたとは、やはり思えないのです。
また「遺伝性」を完全に誤った回答とすることには少し抵抗を感じます。メンデル的な単純な遺伝性疾患でないことはもちろんですが、種々の精神疾患、発達障害の中でも自閉症は遺伝と関係の深い疾患であるといえます。一卵性双生児でも自閉症発症の一致率は50〜90％程度とされていることから、遺伝子のみで発症が決定される訳ではないのですが、二卵性双生児（０〜10%）と比して明らかに発症率が高いことから、遺伝子レベルの強い関与があるとされています。

このアンケートの目的とは直接には関係ないのですが、日本自閉症協会をはじめとした自閉症に関連した団体からは、時として精神障害者に対する強い偏見を感じることがあります。それが僕のような自閉症以外の患者とも関わっている精神科医が陥りやすい、被害念慮であれば良いのですが…。

なにはともあれ、発達障害者支援法施行、おめでとうございます。でも具体的な情報がまだ降りてこないですねえ。

Posted: 金 - 4月 1, 2005 at 10:19 午後       |

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