５歳の自閉症の少年が、キレーション療法施行中に死亡


アメリカでキレーション治療をうけていた自閉症の５歳の少年が、死亡するという事故がありました。

死亡したのは英国の少年で、キレーション療法を受けるために母とともに渡米していました。両親はナイジェリアの出身と言われており、父は英国の病院で、呼吸器内科専門医として働いていたとのことです。少年はピッツバーグ近郊のポータースビルという町にあるAdvanced Integrative Medicine Centerという施設で、３回目のEDTA静注によるキレーション療法を受けた際に、そのオフィスの中で心停止となりました。蘇生処置をうけ、他の病院に搬送されましたが、死亡しました。

少年は剖検（死因を調べるための解剖）を受けていますが、その結果はまだわからず、現時点ではEDTA静注と心停止の関係は不明です。

日本語の記事
自閉症の少年がキレート療法で死亡 （食品安全情報ブログ ）
キレーション療法で５歳児が死亡 （Kashinロンドン留学記 、Times Onlineの記事 の翻訳）
５歳の自閉症児、EDTA静注によるキレーション中に死亡 （ASDNews International 日本のキレーション推進派系のニュース　内容は比較的中立を保っている）

英語のソース
Autistic Boy, 5, dies after disputed therapy (Pittsburgh Tribune)
Autistic Boy's Death Raises Questions (Washington Post )
The Safety and Efficacy of Chelation Therapy in Autism (Autism Research Institute , アメリカの推進系団体によるコメント)

自閉症水銀原因説に基づくキレーション療法は、科学的な効果の証明が不十分であり、専門家の多くがその効果を疑問視してます。アメリカの食品医薬品局によっても治療の適応が承認されていないにもかかわらず、アメリカではかなりの数の子どもがキレーション治療を受けているようです。また日本でも少数ながらそうした治療をうけている子どもがいるようです。2004年にはTBSが報道特集でキレーション療法を取り上げたことから、大きな論争となっています（過去記事参照）。

今回の事故はいまだ剖検も終わらず、EDTAの副作用によるものとは断定されていません。また仮にEDTAによるものであったとしても、同様の事態がそれほど高い頻度で起こるということはなさそうです。

しかし今回の事件とは無関係に、そもそも医学的に効果が証明されていない治療法を、学問的議論による承認や治験も経ずして、多数の症例で実施することの非倫理性が問われるべきでしょう。そうした意味ではこの事故はひとつの契機となるのだと思います。


興味のある方はこちらもご覧ください。
自閉症とワクチン、水銀　関連過去記事一覧

Posted: 金 - 9月 2, 2005 at 09:57 午後       |

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