報道特集「自閉症」続報


昨日もお知らせしたTBSの「報道特集」「自閉症は水銀?新療法も 」が放映されました。
コメントと感想を書いておきます。

あまりにも突っ込みどころが満載なのですが…。いくつか指摘しておきます。

・自閉症と水銀、チメロサールとの関連は現在ほぼ否定されています。「激しい議論」になっていると報じられていましたが、すでに論争は終わりつつあります。厚生労働省のワクチンに関する対応も常識的なものであると言えるでしょう。現時点でチメロサールを理由にワクチンの接種をひかえることは、メリットよりもデメリットがはるかに大きいと言えます。

・僕の知る限りキレート療法に関して、信頼できる比較対照試験はありません。
ここは特に重要なのですが、子供は成長します。自閉症（でなくても）の子供が、できなかったことができるようになった場合、それは成長と教育（療育）の成果であると解釈するのが最も自然です。バランス感覚が良くなるのも、おちついて知能テストが受けられるようになるのも、自然な成長の結果として何も矛盾はありません。「この１年間キレート治療以外なにも新しいことはしていない」とコメントしていた親御さんがいましたが、１年は子供の成長にとって十分すぎるほどの時間であるということが忘れられていないでしょうか。番組ではIQが取り上げられていましたが、自閉症の子供で、特に４才頃から８才頃の間に急速にIQが向上することは、臨床的にもよく経験されます。

ここで重要なのが比較対照試験です。治療を受けたグループと治療を受けていないグループを比較することでしか、成長のファクターを取り除いた治療の効果は評価できません。可能であれば治療を受けるグループと受けないグループをランダムに割り付け、しかも本人や治療者、評価者がその患者がどちらのグループであるかを知らないという条件であることが望ましいとされています。

もしも副作用がほとんどなく、コストも無視できるような治療であれば、乏しい根拠であっても行う意味もあるとは思います。しかし番組でも触れられていましたが、キレート治療の場合、一定の副作用が出現しうるうえ、コストも生じます。慎重になされてしかるべきです。

・ひとつだけよくわからなかったのは、キレート治療により視力障害が改善したというアメリカの子供のケースです。
眼科的にあり得ることなのでしょうか？ 専門外なのでこれについてはまったく解りません。

興味のある方はこちらもご覧ください。
自閉症とワクチン、水銀　関連過去記事一覧

Posted: 日 - 3月 7, 2004 at 06:44 午後       |

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