奈良医師宅放火殺害事件調書漏洩 地裁判決


奈良県の医師宅放火殺害事件の供述調書が流出した事件で秘密漏示罪に問われている精神鑑定医に対して、奈良地裁は懲役4ヵ月執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。

供述調書漏洩で精神科医に有罪判決 「僕はパパを殺すことに決めた」 (MSN産経ニュース)
崎浜被告「間違ったことしていない」 供述調書漏洩で有罪判決 (MSN産経ニュース)
【供述調書漏洩判決】事件が投げかけた課題 (MSN産経ニュース)
【供述調書漏洩判決】龍谷大法科大学院(刑事法)・石塚伸一教授「報道の自由を著しく制限」 (MSN産経ニュース)
【供述調書漏洩判決】ジャーナリスト・大谷昭宏氏「形骸的な内容」 (MSN産経ニュース)

奈良・田原本町の放火殺人:調書漏えい公判 プライバシーか、表現の自由か あす判決 (毎日jp)
調書漏えい:関係者、それぞれの思いで判決迎える (毎日jp)
調書漏えい:精神科医に有罪判決 守秘義務重視 奈良地裁 (毎日jp)

奈良・調書漏えい、鑑定医に有罪…地裁判決 (YOMIURI ONLINE)
調書漏えいの崎浜被告「後悔しない」、草薙さんは姿見せず (YOMIURI ONLINE)

鑑定医に有罪判決 異例の秘密漏示罪で 奈良調書漏出 (asahi.com)

調書漏えい事件、15日に判決  奈良地裁 (47NEWS 共同通信)
調書漏えいの鑑定医に有罪  「軽率、公私混同」、奈良地裁 (47NEWS 共同通信)

調書漏えいで鑑定医に有罪=懲役4月、執行猶予3年-医師宅放火殺人・奈良地裁 (時事ドットコム)
調書漏えい「独り善がり」=鑑定医は控訴-奈良地裁 (時事ドットコム)

そして出版元の講談社が判決に対する見解を出しています。
講談社から皆様へ 崎濱盛三医師への判決にあたっての見解

またこの判決について、弁護士のモトケン先生がブログエントリを書かれています。
調書漏洩事件地裁判決 (モトケンブログ)

弁護側の主張はほぼ退けられた形となっており、かなり厳しい判決であるという印象です。
これらの争点について、判決は「崎浜医師は秘密漏示罪にいう『医師』にあたり、供述調書なども長男のプライバシーに関する内容であり、『秘密』に該当する」と認定。「起訴は公訴権の乱用だ」とする弁護側の主張も退けた。
鑑定医に有罪判決 異例の秘密漏示罪で 奈良調書漏出 asahi.comより)

この最初の点についてモトケン先生はエントリのコメント欄にて
たしかに本件の調書を「医師」として「業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密」と言っていいかどうかについては一抹の疑問があります。
最高裁までいっても当然の事件と思います。
調書漏洩事件地裁判決 モトケンブログより)

と述べられています。

判決の要旨や全文がまだ入手できないので断片的な情報しかありませんが、判決の中でジャーナリストや出版社は厳しく批判されているようです。
この日の判決で、奈良地裁は「検察官が被告人のみを起訴したことで、報道機関から受ける批判を回避したかのような印象を与えたことは否めない」としたうえで、「長男らの秘密が公表された直接の原因は同書の出版にある」と指摘。さらに、草薙さんが崎浜被告には調書のコピーをとらないとしておきながら、デジタルカメラで撮影したことを「取材におけるモラルについて問題を含む」と批判した。
【供述調書漏洩判決】事件が投げかけた課題 MSN産経ニュースより)

この部分はこのような不完全な形でしか、事件を取り扱うことのできなかった司法システムについての、裁判官からの罪滅ぼしの言葉のようにも読めます。ただ出版社や著者を訴追しなかった検察の方針について批判をしているようにも見えるのですが、判決は次のようにも述べています。
判決は、こうも指摘している。「草薙さんや講談社の取材活動の内容や出版の当否は当裁判所が判断すべき事項ではなく、報道や出版に携わる者がそれぞれの立場から行うべきである」
【供述調書漏洩判決】事件が投げかけた課題 MSN産経ニュースより)

報道の自由を尊重する立場からは、この見解自体は妥当なものかとは思うのですが、実質的にこの判決は情報提供者を萎縮させることによって、間接的に報道にも制限を加えていくことになるのかもしれません。

調書を引用した書籍の出版社である講談社は見解で、判決を厳しく批判しています。
まず、この判決は崎濱医師および弁護団の正当な論証をあえて退け、検察側の主張を単に追認しただけの理不尽なものであり、強く抗議します。
講談社から皆様へ 崎濱盛三医師への判決にあたっての見解 より)

ただこの見解の中ではなぜ判決を不当と考えるのかと言う点にはあまり触れられておらず、物足りない感じではあります。

鑑定医側はすでに控訴しているようです。
秘密漏示罪に問われた精神科医崎浜盛三被告(51)は懲役4月、執行猶予3年(求刑懲役6月)の有罪判決を不服として即日控訴した。
調書漏えい「独り善がり」=鑑定医は控訴-奈良地裁 時事ドットコムより)

前記のように法律論的な争いもあり、最高裁までもつれこむ可能性は高いのではないでしょうか。長い裁判になりそうです。

興味のある方はこちらもご覧下さい。
奈良医師宅放火殺害事件 調書漏洩事件 関連記事一覧

Posted: 水 - 4月 15, 2009 at 10:54 午後       |



©