秘密漏示罪で秘密を漏らす対象は、名誉毀損罪の場合ほどの不特定多数である必要はないとされる。しかし、長男にとって具体的な被害とは崎浜被告が草薙さんに調書を見せたことではなく、その著書が流布したことだ。だから崎浜被告と草薙さん、講談社の３者の競合による事件というなら分かる。そのなかで崎浜被告が調書を見せた行為は、いわば左手から右手へ物を移すような、共犯者間の内部的な行為に過ぎない。それのみをあえて犯罪ととらえたのには疑問を感じる。
（【調書漏洩裁判】私はこうみる　白鴎大法科大学院・土本武司院長 より）

－－調書漏洩事件で、自身の活動への影響は
「活動休止状態。私が検察の聴取に『先生に頼んで見せてもらった』と供述したとＮＨＫに報道されてから、報道番組からも出版社からも依頼がなくなった」
（【調書漏洩裁判】「検察の捜査は異常」草薙厚子さん（４４） より）

－－見せる相手や見せ方に問題はなかったか
「公判でも、なぜ草薙さんを信頼したのかと問われたが、信頼の理由はうまく説明できるものではない。草薙さんは少なくとも広汎性発達障害という難しいテーマに取り組んでいた。見せ方は、事後的に振り返れば失敗といえば失敗だが、当時はまさか写真で撮るとも、あのような本が出るとも思っていなかった」
（【調書漏洩裁判】「見せたのは間違っていない」崎浜盛三被告（５１） より）

－－判決を待つ今の気持ちは
「不安はない。仮に有罪を言い渡されたところで、鑑定人として知った秘密を守ることより、１人の少年の人生を守る方が大切だという私の価値観が変わるわけではない」
（【調書漏洩裁判】「見せたのは間違っていない」崎浜盛三被告（５１） より）

ジャーナリストの草薙さんが嫌疑不十分で不起訴となり、情報源の被告だけが医師の秘密漏示罪で起訴されるというのは、いかにもバランスを欠く。一番の問題は、供述調書を直接引用するような形で出版した出版側にあると思うからである。

医師の秘密漏示罪は、本来、医師と患者との関係における患者の秘密の漏示を想定したものであって、本件のような場合は、その本来の趣旨からははずれたところにある。あるいは、その周辺にあるといえよう。
（奈良秘密漏示事件結審 小池振一郎の弁護士日誌より）

「不安はない。仮に有罪を言い渡されたところで、鑑定人として知った秘密を守ることより、１人の少年の人生を守る方が大切だという私の価値観が変わるわけではない」
（【調書漏洩裁判】「見せたのは間違っていない」崎浜盛三被告（５１） より）